研究概要

福祉のまちづくりとは?

 高齢者、障害者を含むすべての人々がいきいきと生活できる福祉のまちづくりを推進するため、現在、国の取り組みとしては「バリアフリー法」が制定されており、兵庫県の取り組みとしては「福祉のまちづくり条例」が施行されている。

「福祉のまちづくり条例」

 まず、住民にとって身近な地方レベルの兵庫県の取り組みは以下のような内容となっている。

◇ 福祉のまちづくり条例の理念

 H4.10.9に公布され、H5.10に施行された条例の前文には以下のように記載されている。

「すべての人々が、一人の人間として尊重され、等しく社会参加の機会を持つことにより自己実現を果たせる社会の構築こそ、人類の願いであり、我々に課せられた重大な責務である。
いま、21世紀の超高齢社会を迎えるに当たり、こころ豊かな兵庫の実現に向け、高齢者や障害者を含むすべての県民がいきいきと生活できる福祉のまちづくりを強力に推進していかなければならない。
ここに我々は、思いやりの心がふれあう福祉のまちづくりの理想を高く掲げ、県民一人一人が手を携え、共に生きる心のきずなを確かめあいながら、その実現に向けて全力を挙げて取り組む決意の下、この条例を制定する。」
こういった理念のもとに、高齢者や障害者を含むすべての人々がいきいきと生活できる福祉のまちづくりにむけた総合的な取り組みが勧められている。

@ 背景

兵庫県では、高齢者、障害者を含むすべての人々がいきいきと生活できる福祉のまちづくりを推進するため、平成4年10月に全国の都道府県で初めての「福祉のまちづくり条例」を制定し、県、市町、県民及び事業者の連携と協力のもとに取組みを進めてきた。
平成6年に、県、市町、県民及び事業者の具体的な取り組みのあり方について示す指針として「福祉のまちづくり基本方針」を定め、これらに基づき、高齢者や障害者を含むすべての人々がいきいきと生活できる福祉のまちづくりを総合的に進めている。

A 「福祉のまちづくり条例」改正の経緯

H4の制定後、H23年までに3次の条例改正と10次にわたる条例施行規則の改正が行われ、常に時代に対応し、時代を先導する取り組みが展開されている。その概略を以下に示す。

H7「福祉のまちづくり条例施行規則」改正(第1次)
国の「ハートビル法」の施行に対応
H8「福祉のまちづくり条例施行規則」改正(第2次)
特定施設整備基準を強化・住宅整備基準を追加
H8「福祉のまちづくり条例」改正(第2次)
小規模購買施設等整備基準を追加
H14「福祉のまちづくり条例施行規則」改正(第3次)
特定施設整備基準を強化・小規模購買施設等整備基準を追加・交通バリアフリー法に対応
H15「福祉のまちづくり条例施行規則」改正(第4次)
独立行政法人対応
H16「福祉のまちづくり条例施行規則」改正(第5次)
独立行政法人対応
H17「福祉のまちづくり条例施行規則」改正(第6次)
自動回転扉に関する基準を追加・オストメイトが利用できる便房に関する基準を追加・歩道に関する基準を追加・日本道路公団等民営化関係法の施行に対応
H18「福祉のまちづくり条例施行規則」改正(第7次)
介護保険法の改正に対応・障害者自立支援法の施行に対応
H19「福祉のまちづくり条例施行規則」改正(第8次)
郵政民営化法等の施行に対応
H20「福祉のまちづくり条例施行規則」改正(第9次)
車いすで利用できる便房の表示の統一化・障害者が利用できる駐車区画の明確化・商工組合中央金庫法その他の政策金融改革関係各法の施行に対応
H23「福祉のまちづくり条例施行規則」改正(第10次)
特定施設整備基準の強化その他第3次条例改正に対応
B 福祉のまちづくり手引書について

 条例では、様々な施設等において遵守すべきバリアフリー整備基準を定めているが、これらの整備基準は基本的な配慮事項のみを定めており、この基準を満たしていれば十分配慮が行き届いた施設になるというものではなく、整備基準の目的を理解するとともに、利用者の立場に立って、より利用者に配慮した施設の整備に積極的に取り組むことが望まれている。
 条例の整備基準の内容に加えて、施設整備・管理運営の双方に関し配慮することを推奨する事項について、施設の所有者・管理運営者・設計施工者をはじめ、県民の理解と協力により施設整備や管理運営を行う際に参考となる手引書が順次作成されている。
 この手引書は「公益的施設編」、「公共の交通機関の施設編」、「公共施設編」、「住宅編」、「関連制編」から構成することが予定されており、利用者や専門家の意見を参考に、定期的に見直しを行い、充実させていくこととしている。

C 特定施設のチェック&アドバイス制度

 H23の条例施行規則の改正により、特定施設の整備と運営について点検し助言する者を「福祉のまちづくりアドバイザー」として登録し、施設の所有者等の求めに応じて県があっせんする制度が新設された。

D ひょうご県民ユニバーサル施設認定制度

 H23の条例施行規則の改正により、「福祉のまちづくりアドバイザー」を活用するなど、県民の参画と協働により高齢者等が利用しやすい整備と運営を行っている「特定施設」を「県民参加型特定施設」として認定できることとする制度が新設された。

E バリアフリー情報の公表義務

 H23の条例施行規則の改正により、既存施設も含め、特定施設のバリアフリー化をより一層促進するため、特定用途かつ一定規模以上の特定施設(特定の者のみが利用する施設は除く)の所有者・管理者にホームページなどを用いた、バリアフリーに関する情報の公表が義務付けられた。

F 「福祉のまちづくり基本方針」による福祉のまちづくりの課題

 「福祉のまちづくり条例」第7条に基づき、H6.3「福祉のまちづくり基本方針」が策定された。この方針は、「まちづくり基本方針」における福祉のまちづくりに関する施策の詳細な指針であるとともに、「ひょうごユニバーサル社会づくり総合指針」におけるまちづくりに関する施策を推進するための指針として位置づけられている。
 H24に改定された「福祉のまちづくり基本方針」の中では以下のような6点の福祉のまちづくりの課題が挙げられている。

(1)ユニバーサル社会づくりへの対応

 福祉のまちづくりを進める上で、ユニバーサル社会づくりの視点をより一層明確化し、高齢者、障害者のみならず、妊婦、乳幼児、外国人等誰もが利用しやすい都市や生活環境をデザインするユニバーサルデザインを進めていくことが求められる。
 また、阪神・淡路大震災等の災害の経験から、人と人とのつながりや支え合いの重要性や、保健・医療・福祉サービスの供給体制の重要性を学んだことから、障害者等への声かけ運動や保健、医療、福祉サービスを供給する拠点整備などの地域活動などと連携した、ハードとソフトが一体となったまちづくりを進めることが重要であり、地域の実情に応じ、住民ニーズ等を踏まえ、ユニバーサル社会づくりに取組む必要がある。

(2)著しい高齢化の進展や障害者の社会進出への対応

 本県では、H32年には、65歳以上の高齢者人口が全人口の約3割となることが見込まれるなど、急速に高齢化が進展するとともに、「障害者自立支援法」の制定により障害者の社会進出が今後もより一層見込まれる。
 このことから、高齢者、障害者を含むすべての人々が安心して生活し、活動できるよう、住宅や施設単体のバリアフリー化、施設等に至る経路の整備などバリアフリー化をより一層促進することが求められる。
 これに対応するための具体的な内容として4つの点が挙げられている。

  1. 公共交通機関の施設、車両等のバリアフリー化
  2. 公共施設のバリアフリー化
  3. 公益的施設等のバリアフリー化
  4. 住宅のバリアフリー化
(3)利用者目線でのきめ細かな施設整備、管理・運営の適正化

 施設をより利用しやすいものとするためには、バリアフリー整備基準に沿った施設整備だけでなく、人的対応などを含め、施設の管理・運営に関する取組が重要である。
 このためには利用当事者による「まち」の状況の点検をもとに、結果の分析及び課題の抽出を行い、これを施策に反映していく「まち検証」が必要であり、障害者等をはじめとする施設利用者の参加を得て、利用者目線できめ細かな整備や管理・運営を進めることが重要である。
 また、施設の所有者や管理者による適正な管理、運営を誘導することも必要となっている。

(4)情報を容易に入手できる環境の確保

 障害者等は、施設利用に際し、バリアフリー化等施設の配慮状況について事前確認が必要となる場合があるほか、外国人は、用いる言語の違いにより情報の制約を受ける場合がある。
 今後、公共施設のみならず民間施設においても施設利用に先立ち、当該施設のバリアフリー状況の情報等が容易に入手できるよう、施設の管理者による設備やサービスの有無を含めたバリアフリー状況の情報公開を促進し、必要な情報の入手機会を拡大するとともに、情報のわかりやすさや外国語表記など情報の内容の充実を促進することが求められる。

(5)自然災害等の非常時への対応

 震災や風水害による災害では、被災した高齢者、障害者等の災害時要援護者に対する情報伝達、避難誘導等が円滑に進まず、被災後の生活のケアが十分でなかったことなどの課題がみられる。
 このため、非常時の備えとして、施設のバリアフリー化に加え、地域において災害時に支援が必要となる災害時要援護者の情報共有や避難支援体制の構築が求められる。

(6)福祉のまちづくりの担い手の育成

 福祉のまちづくりを推進するためには、行政はもとより県民や事業者が福祉のまちづくりの考え方を主体的に理解し、協働により総合的に進めていくことが重要である。
 そのためには、義務教育の時期をはじめとする学校などにおける福祉教育や生涯教育において、人々の多様性に対する理解を深める機会を設けることにより、福祉のまちづくりの担い手を育成することが必要である。
 また、福祉のまちづくりを推進する様々な知識・経験や、先端技術を活用した研究開発などによりデータを蓄積し、これらを基盤として、福祉のまちづくりをより一層推進することが求められている。

G 福祉のまちづくりの基本的方向

 「福祉のまちづくり基本方針」では、福祉のまちづくりを実現させるために以下の基本的方向に沿って施策を推進することとされている。

  1. 高齢者、障害者、妊婦、乳幼児をはじめとするすべての人々が、いつでもどこへでも安全・快適に移動でき、活動できることに配慮し、整備を進める
  2. 地域の実情に応じ、利用者の視点を重視してハードとソフトの一体的な取組を進めるとともに、適切な点検・評価により取組内容の充実を段階的かつ継続的に進める
  3. あらゆる場面で福祉のまちづくりが展開されるよう、福祉のまちづくりへの理解を深め、県民、事業者、行政等の協働による取組を進める
「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(バリアフリー法)

 地方レベルの福祉の関する取り組みの根拠を示す法律については、H5障害者対策基本法、H10高齢者対策基本法が施行されている。
 「福祉のまちづくり」を対象として設けられた法律としてはH6.9「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(通称「ハートビル法」)、H12.11「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(通称「交通バリアフリー法」)がそれぞれ施行されてきた。
 これら2つの法律を統合してH18.12.20「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(通称「バリアフリー法」)が施行された。

◇ バリアフリー法の理念

 高齢者や障害者などの自立した日常生活や社会生活を確保するために以下の施策を展開することにより、公共の福祉の増進に資することを目的とする。

  • 旅客施設・車両等、道路、路外駐車場、都市公園、建築物に対して、バリアフリー化基準(移動等円滑化基準)への適合を求めるとともに、公共交通施設や建築物のバリアフリー化を推進する
  • 駅を中心とした地区や、高齢者や障害者などが利用する施設が集中する地区(重点整備地区)において、住民参加による重点的かつ一体的なバリアフリー化を進めるための措置などを定める
  • バリアフリー化の促進に関する国民の理解・協力の促進等
@ 「移動等円滑化の促進に関する基本方針」の内容

バリアフリー法第3条に基づく「移動等円滑化の促進に関する基本方針」では以下の内容を定めている。

(1)移動等円滑化の意義と目標
○移動等円滑化の意義
本格的高齢社会の到来や自立と共生の理念の浸透など、高齢者・障害者等を取り巻く社会情勢の変化等に対応
○移動等円滑化の目標
旅客施設や車両、道路、公園、建築物等について、平成32年度末を期限として、より高い水準の新たなバリアフリー化の目標を設定
(2)施設管理者が講ずべき措置
○適切な情報提供
視覚障害や発達障害など、情報に係る障害をもつ人への対応を含めた多様な障害者等への対応をより具体的に推奨
○職員等の教育訓練
施設設置管理者による職員等への教育訓練に関し、PDCAサイクルの中でマニュアル整備や研修実施への高齢者・障害者等の意見反映や参画を推奨
(3)基本構想の指針
○重点整備地区における移動等円滑化の意義
  • 市町村が重点整備地区について作成する基本構想の必要性を強調
  • 作成した基本構想について、地域の高齢者・障害者等が参加しつつ、関係事業の実施状況等を把握しながら成果の評価を行い、内容の段階的かつ継続的発展を図る「スパイラルアップ」をより強く推奨
(4)移動円滑化施策に関する基本的事項その他
○国民の責務
国民が、高齢者・障害者等の自立した生活の確保の重要性等について理解を深める「心のバリアフリー」において、外見上わかりづらい聴覚、精神、発達障害など障害に多様な特性があることに留意する必要性を明示
A バリアフリー法による取り組みの課題及び今後の方向性

H18.12にバリアフリー法が施行され、施行後5年を迎えた。バリアフリー法の附則では、施行後5年を経過した場合において、法律の施行状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることとされていることから、「全国バリアフリーネットワーク会議」※の下に「バリアフリー法施行状況検討会」を設置し、関係者の意見を聞きながら、実務的に検討作業を進め、H24.8.3検討結果を全国バリアフリーネットワーク会議に対して報告を行った。
※全国バリアフリーネットワーク会議:国土交通省のバリアフリー施策のスパイラルアップ(段階的・継続的改 善)を図るため、広く関係する全国の高齢者・障害者等団体、施設設置管理者団体、学識経験者、行政機関等が一堂に会し、バリアフリー法に基づく取組みの現 状把握、課題の抽出、対応方策の検討や提案等を行うために開催するもの。平成20年度より年1〜2回程度開催。

 「バリアフリー法施行状況検討会」の検討結果によると、バリアフリー法に基づく取組みの状況及び評価を踏まえ、以下のように課題が取りまとめられ、今後の取り組みの方向性が示されている。

◆現状の取組みに対する主な課題
  1. バリアフリー化の推進(バリアフリー化の推進、バリアフリー化の実態把握・情報提供等)
  2. 基本構想の取組みの推進(現行の他の計画等との連携、基本構想の作成促進策、協議会等の体制・取組み等)
  3. 心のバリアフリーの推進(バリアフリー教室の見直し、知的障害・発達障害・精神障害者への理解の促進等)
◆今後の取組みの方向性
  1. 一体的・総合的なバリアフリー化の推進:交通計画やまちづくり等との連携によるバリアフリー化の推進、災害時・緊急時に対応したバリアフリー化方策の検討等
  2. 様々な障害特性に対応したバリアフリー化の推進:災害時緊急時の情報提供方策の検討等
  3. バリアフリー化に係る情報発信の強化:バリアフリー化の評価・指標の検討等
  4. 当事者が主体となったスパイラルアップの推進:全国バリアフリーネットワーク会議・地方バリアフリー連絡協議会のあり方の見直し等
  5. バリアフリー化に係る教育・普及方策の強化:事業者等へのバリアフリー研修のあり方の検討等