日本福祉のまちづくり学会関西支部

 
セミナー

第31回 日本福祉のまちづくり関西セミナー報告  
淡路島の施設見学会とトーク  "癒しのユニバーサルデザイン を考える"

― 2008年11月29日(土) 淡路ふくろうの郷・兵庫県立淡路景観園芸学校 ―

共催:ひょうごアシステック研究会

共催:障害のある方々を支援する科学学会

  今回は感覚と癒しをテーマに、淡路島にある2つの施設見学(淡路ふくろうの郷と淡路景観園芸学校)を行いました。今回のセミナーでは、これらの施設の見学や説明とともに、園芸療法やランドスケープ、ユニバーサルデザインに関する研究者による「癒しのユニバーサルデザイン」についてのパネルディスカッションも行いました。
 福祉関係の企業の方や研究者、学生など幅広い分野から43名の参加がありました。

施設見学1/ 特別養護老人ホーム 淡路ふくろうの郷  10:30〜11:30
 
 淡路ふくろうの郷(洲本市中川原町)は、兵庫県では初めて聴覚に障害を持つ方々も安心して暮らせるように配慮がなされた特別養護老人ホームです。10人1ユニットの全室個室で、7ユニットで構成されています。現在、聴覚に障害のある入所者は9割だそうです。
 入所の方々の笑顔はとても活き活きされていました。さり気ないデザインも素敵で、とても落ち着く素晴らしい施設でした。
 

 設計段階から、聴覚障害の当事者でもある建築士の職員が関わって創られた施設は、木のぬくもりが感じられる居心地のよい空間で、視覚で情報が補えるような配慮が多くなされていました。
 例えば、 動線が交差するところは衝突を避けられるように、見通せるデザインがされています(聴覚障害者には見えないところからの足音が聞こえない)。ナースコールや個室の呼出チャイムなどは、音だけではなくフラッシュランプにより光でもわかるようになっています。

〈星ユニットの入口〉
ユニット名にあわせた記号がうまくデザインされている
〈浴室 〉
外を見ながら気持ちよく入浴ができる
車いすでも入浴できるリフトもある

〈入所者のみなさんによる力作 〉
〈見学後の質疑応答の様子 〉
施設見学2/ 兵庫県立淡路景観園芸学校  13:30〜14:30
 

 淡路景観園芸学校は、花と緑を実践学習する教育機関です。
 校内に広がる美しい庭や園芸療法ガーデンを、シニアボランティアさんによるプロも顔負けの楽しい解説を受けながら巡りました。庭には多様な樹木と草木が植えられていて、紅葉だけではなく、美しい花も見ることができました。めずらしい樹木を解説いただいたり、レモンの香のする植物の葉を実際にちぎって香りを楽しませていただいたり、足と目と鼻と・・いろんな感覚を使って見学させていただきました。

〈景観園芸学校内の見学の様子 〉
〈園芸療法ガーデンの様子 〉
パネルディスカッション/ 兵庫県立淡路景観園芸学校  14:30〜16:00
  「癒しのユニバーサルデザインー緑の視点から」
 

 見学の後、淡路景観学校の視聴覚室にて、摂南大学教授 田中直人氏をコーディネーターに、兵庫県立大学 自然・環境科学研究所の美濃伸之氏、杉原式穂氏によるパネルディスカッションを行いました。

 はじめに、美濃伸之氏と杉原式穂氏が取り組んでおられる研究を紹介をしていただき、話題提供をいただきました。

〈パネルディスカッションの様子 1 〉
 
 
 研究紹介 ”公園バリアフリー情報に関する取り組み”   美濃伸之氏
 公園バリアフリー情報に関する取り組みの調査から、現状と課題をお話いただきました。日本では提供情報の内容がスロープの有無などのハード面に偏りがちで、“何がそこで楽しめるのか”といった情報が不足していることや、”整備がある”ものの情報ばかりであり、より大切な”この整備はない”という情報が欠如している等のご指摘をいただきました。
 
 研究紹介 ”癒しのユニバーサルデザインを考える 園芸療法”   杉原式穂氏
 園芸療法とは特別な植物を使うわけでなく、園芸作業自体にある多くの効果を意図的に利用するものであることなど、解説いただきました。1時間程度の除草などは、早足で20分くらい歩くのと同じ効果があるそうです。園芸療法の効果について、高齢者に対して実施された調査結果をもとに、音楽療法や陶芸の場合との比較も含めてご紹介いただきました。

 

〈パネルディスカッションの様子 2 〉

 

 最後に、参加者も含めて園芸療法やユニバーサルデザインの今後についてディスカッションを行いました。
 現状のバリアフリー情報の偏りをなくし、ソフト面を充実するためには、違う視点の人とのコミュニケーションが不可欠であり、協同作業が必要であるということや、日本はなんでも金太郎飴のように同じものを造ってしまうが、地域に応じたものを造る姿勢が必要ではないか、など様々な議論がなされました。議論の時間がやや足りなかったため・・少し残念でしたが、今後、また議論を深めていければと思います。

 
文責:室崎千重(兵庫県立福祉のまちづくり工学研究所)


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