日本福祉のまちづくり学会関西支部

 
セミナー

第28回 日本福祉のまちづくり関西セミナー報告  
「外出したい」という思いの実現に向けて 情報案内からのアプローチ

― 2007年6月1日(金) 大阪桐杏学園第2会議室(大阪駅前第3ビル17階) ―

 今回のセミナーでは、NPO法人まちの案内推進ネットの岡田光生氏をお迎えして、「外出と交通の案内について」のアンケート調査結果と、“駅のバリアフリー情報『えきペディア』(http://www.ekipedia.jp)”についてご紹介いただきました。さらに、車いす使用者、視覚障がい者、聴覚障がい者の方々をパネリストに加え、利用者の立場からご意見をいただき、情報案内のあり方について議論を深めました。
 参加者は59名、市民、学生、コンサルタント、大学関係者など多様で多数の参加を得ることができました。

■話題提供
「情報案内の課題と今後の方向性〜駅のバリアフリー情報案内『えきペディア』を事例に〜」
岡田 光生氏(NPO法人 まちの案内推進ネット 理事長)

 NPO法人まちの案内推進ネットでは、2006年に大阪府下および近隣都市の障害者、介助者、高齢者にアンケート調査を実施し、2059票の回答を得ることができました。アンケートでは、外出の状況をはじめ外出前の情報収集、駅の利用のしやすさ、駅の案内について20の設問を設けました。
 アンケート結果から、障がい者の方は交通機関やトイレなどの事前情報が重要であることともに、その必要な情報案内が適切に行われていないことが確認されました。
 今後の情報案内は「情報更新手段の確保」、「まちの財産としての情報案内(サイン)の活用」、「利用者の参加」が大切であると考えています。
 NPO法人としては、できることから始めてみようということで、WEBサイト「駅のバリアフリー情報案内『えきペディア』(http://ekipedia.jp)」を立ち上げています。参加型の情報案内として、登録された方はどなたでも情報を追加、更新することができます。まだ、試行の段階ですが、様々な方面から評価をいただいています。


〈講演の様子 〉
■パネルディスカッション
    コーディネーター:辻 一氏(社団法人 大阪脊椎損傷者協会 会長)
    パネリスト   :佐原常義氏(大阪市聴言障害者協会)     
              中林智子氏(NPO法人自立生活センター Flat きた)
              岡田光生氏(前掲)
 
 後半は障がいをお持ちの方々をパネリストに迎えて、日頃の外出時における情報案内の問題点や改善していくための視点や考え方について議論を行いました。

辻氏
 地下鉄のエレベーター整備など、バリアフリー化が比較的進んでいる大阪市においては、特に地下と地上のサインの連携ができていないことが課題となっています。
 駅に関するバリアフリー情報は事業者等のホームページなどで提供されているが、その中で「えきペディア」に期待することは、利用者のエキスパートに書き込んでもらい改善していける機能を備えていることです。また、全国の駅について情報提供している公共サイトなどとリンクしていくことで、さらに使い易い、充実した情報提供が出来るのではないかと期待しています。

〈パネルディスカッションの様子 1〉
佐原氏
 聴覚障がい者は、事故や災害時のリアルタイムの情報提供の不足が一番のバリアになっています。リアルタイムの情報提供は難しい課題ですが、電光掲示板の充実等で適切な情報案内を行ってほしい。

中林氏
 視覚障がい者は、改築工事などで、いつも利用している経路が通れなくなっていると危険な目にあうことが多い。できれば、そのような情報案内も提供していただけると助かります。また、トイレの情報は視覚障害者にとって事前にほしい情報です。トイレの位置や音声案内の有無だけでなく、水洗の方法や男女の区別の仕方など、詳しい情報が必要だと感じています。


〈パネルディスカッションの様子 2〉
 
岡田氏
 現在のえきペディアは、視覚障がい者には対応できていません。音声による案内や、色のコントラストの配慮などにも取り組んでいきたいと考えています。情報案内は情報の連続性とメンテナンスが大切だと考えます。案内板(サイン)は、まちをアピールする場と考えて、地元住民の方々が情報更新していけるようなしくみができないかと考えています。

会場から
 えきペディアを今後、利用してみたいと思いました。ホームページでの情報案内はわかりやすいですが、実際に駅で迷うことも多いです。このため、バリアフリールートについて携帯電話などでナビゲーションできるようなしくみがあれば、とても有効だと思います。

総括(辻氏)
 今回の議論で、情報案内は連続性とメンテナンス(更新)が重要であることが確認されました。それらを実現していくためには、多様な人々の連携や財源が必要になってきます。その解決策の一つとして、地域コミュニティとの連携や、利用者の参加、協力が考えられます。駅ペディアが様々な情報案内の最初の入り口になり、きめ細やかな事前情報やリアルタイムの情報が得られるようなしくみが構築されることを期待したいと思います。
 
文責:石塚 裕子(八千代エンジニアリング株式会社)


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