日本福祉のまちづくり学会関西支部

 
セミナー

第26回 日本福祉のまちづくり関西セミナー報告  
「心に障がいのある人も安心して住まえる環境づくり」

―2006年7月7日(金) 大阪社会福祉指導センター・研修室2(大阪市中央区)―

 知的障がい者や精神障がい者に対しては、障がいについてあまり知らないことから、まだまだ積極的に取り組まれていない現状があります。今回のセミナーでは、「心の障がい」をテーマに、縦糸に「心の障がい(認知症と精神障がい)」、横糸に「施設と地域生活」を取り上げて、お二人の先生から話題提供をしていただきました。
 参加者は40名、建築関係、福祉関係、研究者、行政、NPO、学生など多数の参加を得た。

コーディネーター 大河内雅司氏(株式会社 地域計画・建築研究所)
◆話題1 認知症の人々が安心できる住環境整備
  足立 啓氏(和歌山大学システム工学部・教授)
◆話題2 精神障がいのある方が安心できる地域づくり―大東市の実践―
  山本和儀氏(大東地域リハビリテーション研究所・所長)
◆話題1/ 認知症の人々が安心できる住環境整備
〈講演の様子 1〉

 

 

◇足立 啓氏(和歌山大学システム工学部・教授)
 認知症の中核症状(記憶障害や方向感覚喪失など)は病気であるため、現在は治すことができない。判断ができないため、「余分に料金を支払ってしまう」(以前は問題行動、迷惑行為と呼ばれていたもの)などは、環境側の対応を行うことで軽減しうる。また、心身が弱っているほど、環境から受ける影響が大きい。心身障害者は、環境への幅が小さい。そのため、環境を整備するべきである。
環境の整備として、施設設計の変遷を振り返ると、初期は、迷惑行為をネガティブに捉え、どのように抑止するかに主眼があり、病院設計そのものであった。回廊型に施設配置を行うことにより、回廊を徘徊させ、疲れさせ、問題行動の抑制をはかった時期もある。その後、家庭的な環境を作るように目指すようになり、ユニットケアが中心となってきている。良い環境の下で良いケアを行うことにより、身体能力や判断能力の低下が防げ、無為行為が減り、コミュニケーションが生まれるなどの良好の結果が得られる。
これまでの住宅か施設かという二択一から、今春の介護保険制度でも、地域の中に小規模多機能な施設を増やすこととなり、グループホーム、宅老所が増えてきている。このようにAging in place(住み慣れた地域ですむ)が重要である。この実現のためには、地域で見守っていくことが必要であり、厚生労働省では、認知症患者を地域で見守る取り組みを進めている。認知症に対する理解を促進し、一小学校区に10人程度の認知症患者を見守ることができる人を作ろうとしている。
今後の課題として、まず、在宅の人をどうサポートするかである。在宅の人をサポートするためには、宅老所などを地域に点在させていくことが必要である。さらに、既存の大規模な施設については、ユニットケア化の導入をどのように行うかを明らかにする必要がある。
 
 
◆話題2/ 精神障がいのある方が安心できる地域づくり―大東市の実践―
 
   
〈講演の様子 2〉
   
   
◇山本和儀氏(大東地域リハビリテーション研究所・所長)  
 精神障害者であろう基本的な考え方は、話題1の認知症患者と同じである。つまり、「普通に生活を行いたい」という点である。ただし、精神障害者は、認知症患者と異なり、若い人を含むため、(普通に生活を行うということに)「働きたい。」「結婚したい。」という意見が多く含まれる。精神障害者が安心して住める環境づくりを目指した大東氏での実践事例を紹介する。

まず、行政の組織において、精神障害者の担当は府県であるという縦割り行政の弊害を受けてきた。そこで、大東市にはリハビリテーション課が設置され、縦割りの弊害の解消を目指した。

共同作業所の運営においては、あらゆる人を巻き込んでノーマライゼーションを推進することを実践している。専門家が支えるのは当然であり、地域が支えなければならない。当事者の会から市民の会と発展し、すべての人が参加しているという形にしないとシステムは持続しない。この実現のためには、お互い知り合うことが原則である。そのため、地域の人との接点を持つ努力を行った。餅つき大会やBBQ大会に地域の人に来てもらい、「精神障害を有していても、皆と同じ、怖いことはない」と感じてもらい、むしろ、「やさしく、傷つき安い人が多い」と気づいてもらうことができた。また、市長に行事に参加をしてもらっていることは、市民の精神障害者に対する認知度を高めることに役立っている。

 
 社会福祉法人 ふらっぷの活動においては、今年行ったライブについて写真を交えて紹介を行った。会場では当事者がライブを行う際の写真が示されたが、当事者の写真を撮ることを了解している。これは、当事者が精神障害を特別のものと考えないようになっている現われであると考える。また、精神障害者が自己表現できる地域環境を作っていくことが重要である。最後に、相手の気持ちを分かることが、ハードもソフトも変える。
 
◆質疑応答
 


〈講演の様子 3〉


◇Q:認知症とユニットケアについて、課題は?

◇A:足立教授より
 新規の施設はユニットケアで整備することとなっており、800ほどある。しかし、箱物ができても、ユニットケアを使いこなせるかが課題である。ソフトが大事なのだが、ハードを使い切っていない点も大事な課題である。厚生労働省もこの点に危機意識を持っており、管理職を全員研修するような制度を整えつつある。
一方、4人部屋と大食堂と大浴場を有するような既存の施設は5000ほどある。これをユニット化することが非常に難しい課題である。全部個室にするのはむずかしく、10年先にも4人部屋が残る。この中で、どのような個人的な対応を行うか問題である。4人部屋でのケアに対して、介護報酬が伴うような制度改善が必要である。

 

◇Q:地域とのかかわり、逆ディ(特養から出かけていく)地域に出て行く際の安全の確保、どのようなバリアフリー整備を行えばよいか?

◇A:足立教授より
 ユニットケアにおいても施設内に閉じ込めておくことは誤りである。グループホームでは、外に出て行くような試みを行っている。さまざまな残存能力があるので、有効活用することが重要である。認知症患者と幼児が同じ場所でケアを受ける宅幼老所が作られている。認知症患者の中には元学校の先生おり、このような人は褒め上手であったり、しかるのが上手だったりする。持っている能力を社会的に使っていくことが必要である。
徘徊で要介護であるから部屋の中に閉じ込めておくのはいけない。マッチングは難しいが、認知症患者が保育所の保母と一緒に、公園などに園児を連れて回っている。これにより犯罪が減った。このようにマッチングを行うのがプロのケアワーカーである。
しかし、地域が最終的にフォローを行わなければならない。そのため、養成の制度を作っている。

 
◇Q:高齢者の保健福祉計画の策定に当事者の参加があることによるよさは?

◇A:山本氏より
 自分のことを他人に決めてほしくない。結果はどうなるかは分からないが、プロセス自身が重要である。プロセス中で学ぶことがある。当事者が参加しない計画は傲慢である。

 
◇Q:交通バリアフリー法で、精神障害者の人がどのように意見を述べてもらうのか?
◇A:山本氏より
 精神障害者が意見を述べられないということ自身が問題である。ただし、精神障害者が自分の意見を述べられないというのは誤解であり、実際に大きなイベントの中で場を与えると、自分を主張できている。
具体的な計画を実施していく面で、一番大事なことは教育である。教育の現場で、精神障害者と健常者を分けていたら教育が進まない。直接、市民とかかわりを持てるかが重要である。そのため、あらゆる関係機関と連携を図れるようにならなければならないし、市民に直接啓発をはかれるようにならなければならない。
リハビリテーション課は専門家集団が継続してものを言えるよう揺るぎのないものにしていく必要がある。
◇Q:新交通バリアフリー法の施行に伴い、精神障害者の方にどのような参加が考えられるか?
◇A:山本氏より
 精神障害者の人は、あまり外に出ていない。社会経験が少ないので、電車の切符の買い方も知らない。しかし、移動に関するサポートができるようにできることには良い。移動に安心、安全、やさしい駅となることが重要であり、法律の持つ意義も大きい。バリアフリー新法では、ハードだけではなく、ソフトをどう統合していくかが非常に難しい。
 
◆多淵支部長まとめ
〈講演の様子 4〉
顔と形が違うように、精神が違うのは当然である。ということがショックである。以前に職場の同僚に時々奇行がある人がいた。しかし、今日の話を受けて、それは偏見であったと思った。相手の立場に立って、考え、やさしく休ませて挙げるという対応を取ればよかったと反省をした。どこかの教育の場で、教えていかなければならないと感じた。
 


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