日本福祉のまちづくり学会関西支部

 
セミナー

第23回 日本福祉のまちづくり関西セミナー報告  
「『福祉のまちづくり条例』とかかわって」

―2005年6月20日(月) 大阪桐杏学園・第6会議室(大阪市北区)―

 6月20日、大阪桐杏学園にて「『福祉のまちづくり条例』とかかわって」と題したセミナーを開催した。講師は日本福祉のまちづくり学会関西支部支部長である兵庫県立福祉のまちづくり工学研究所長の多淵敏樹氏で、兵庫県の「福祉のまちづくり条例」の平成14年度の改正に関わられた経験から、改正内容、これまでの経緯などをお話いただいた。参加者は62名、兵庫県、大阪市、和歌山県において福祉のまちづくり条例に関わる行政担当者、コンサルタント、大学で建築を学ぶ学生など多数の参加を得た。

講  師:

多淵敏樹氏(兵庫県立福祉のまちづくり工学研究所長)
■講演:「『福祉のまちづくり条例』とかかわって」
〈講演の様子〉
 

 初めに、全国での福祉のまちづくり条例の歴史を説明された。兵庫県が全国で初めて、平成4年(1992年)10月に制定したので、兵庫県だけは県名のつかない条例名となっているが、大阪府は、兵庫県の20日ほど後に制定となったが、施行は大阪府のほうが早かったことを話された。現在は、平成15年(2003年)4月に群馬県が制定した「ひとにやさしい福祉のまちづくり条例」を最後に、すべての都道府県で類似の条例が制定されるにいたっていることを、説明された。

 

 
 兵庫県と大阪府との決定的な違いは、大阪府は建築基準法施行条例に福祉のまちづくり条例が入っているため法的根拠があることである。これによって、確認申請時に条例についても一緒に審査することができるのである。しかし兵庫県は福祉のまちづくり条例の担当課窓口に届け出ることになっており、建築関係の課がない町では、福祉関係課ですべてのチェックができるかどうか、という懸念が残っている。建築確認申請と連動した形になっていないことが問題である。
 兵庫県は、福祉のまちづくり条例を他の県にはない100uという規模にまで、適応させるとしたが、条件が厳しいため、これによって建築基準施行条例に入れにくいという側面もあると思われる。
 また、平成4年の制定当時、兵庫リハビリテーションセンター所長であった澤村誠志氏(日本福祉のまちづくり学会会長)が、工場を対象建築物に入れるようにと強く主張されていたと話された。労災による障害の場合、工場で事故に遭っている確率は高く、社会復帰の場として元の職場である工場への勤務を希望する人は多いのだそうだ。そのためにも工場のバリアフリーは当然だと主張され、規模基準も500uくらいに下げる努力をされていたが、結局3000u以上との基準となっている。
 平成14年の改正において、学校の特別教室を含む棟には、EVの設置が定められたが、実は、増改築の場合は1000u以上を超えるものについては設置、と書かれている。つまり、増築した結果が全体で2000u以上になるとしても、増改築部が1000u未満であると、EVの設置義務がなくなってしまう為、問題だと感じている、とのことであった。
■ディスカッション
 講演後のディスカッションでは、会場から以下のような、質問・意見が述べられた。
 


〈ディスカッションの様子〉

 現行の法制度では古い木造家屋に人用のエレベーターを設置できないため、荷物用ダムウェイターを車いす用に改造したものを設置することも多い。違反用途での使用であるため、事故などがあったときに保障が効かないことが問題である。
 
 建築本体の中に設置されるEVは基準にのっとらねばならないが、渡り廊下などで渡して別に設置すれば可能となったり、もうひとつは、管理下にあればよいという条件があり鍵付きとして使用するときのみ開錠するとった方法がある。基準が変わらないかどうか大阪府との話し合いは行っているところである。
 ファミリーレストランで、1階に障害者用駐車場を設けながら2階の店舗へは階段でのアクセスしかないというところが多い。現状は、全国のどこの条例でもこの問題について定めたものはない。

 大阪府が兵庫県よりも交通バリアフリー基本構想が進んでいるのはどうしてだろうかとの質問に、会場から大阪府内の交通バリアフリー基本構想に関わっているコンサルタントの方から、大阪府は交通バリアフリーの担当を設け、テキストを作成して、市町村へ出向き基本構想策定のアドバイスを行った。市町村へ講習会なども行い情報提供を行っている。これは、市町村担当者としてはかなり頼りになったと思われる。兵庫県は、福祉のまちづくり条例の重点整備地区が既に定められていたこともあり、市町の独自の努力に任せていたところが多いように感じる。府県の姿勢の違いがあるのではないだろうか、との意見があげられた。

 
 質疑応答は、セミナー終了後も会場内で参加者同士で行われていて、関心の高さを示していた。


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