セミナー

第41回 日本福祉のまちづくり関西セミナー報告

「大阪都心部のサイン環境からユニバーサルデザインを考える」

開催日:2014年6月9日(月) 18:00 〜 19:30
場 所:大阪市立大学文化交流センター大セミナー室(大阪駅前第2ビル6階)
講 師:田中直人氏(島根大学)
講 師:岩田三千子氏(摂南大学)
講 師:土田義郎氏(金沢工業大学)
講 師:北川博巳氏(兵庫県立福祉のまちづくり研究所)
講 師:二井るり子氏((有)プラネットワーク)
 今回の関西セミナーは、日本福祉のまちづくり学会サイン環境特別研究委員会メンバーを講師に迎えて、「大阪都心部のサイン環境からユニバーサルデザインを考える」と題して、委員会における調査研究結果を通じた話題提供を行っていただきました。37名の参加者があり、活発なディスカッションがなされました。
 話題提供は、まず田中氏からUDにおけるサインの役割と現状と題して、日本人の親切さからくる足し算のサインによって余計にわかりにくくなっている現状が報告され、ロービジョンの人が求める環境情報のあり方などを参考にサイン計画のあり方を検討した結果、ピクトグラムや色を用いたり大きく表示するなど、できるだけシンプルなほうがわかりやすくなるという提案がなされました。また、建築とサインを別々に考えるのではなく、壁や床をサイン化してしまうなどの建築と一体化したサイン計画や五感を用いたサイン計画の提案や実例紹介などがなされました。 土田氏からは、梅田の地下街における実地歩行検証の結果から、現状のサインの問題点などが指摘されました。この実地検証は土地勘のある人とない人の比較を行っていましたが、多少の土地勘は結果に影響をもたらさないとの結果が報告されました。 同様に岩田氏からも、谷町4丁目における実地補講検証結果が報告され、特に光環境の観点から問題点の指摘がなされました。
 パネルディスカッションでは、北川氏から国によるガイドラインの整備状況と今後の課題について報告があり、多様な人を対象に限られた空間の中で、どのように表示していくべきかと問題提議がありました。二井氏からは、建築の現場では設計段階においてサインを考慮することはないこと、サインの整備は建築物が完成した後に別途整備されることが多く課題があることが報告されました。
 会場からは、トイレのピクトグラムの色使いについてジェンダーへの配慮について質問があり、色が持つ誘目性と多文化への配慮との調整など、新たな課題が明らかになりました。また、サイン環境を調査する時には、車いす使用者など当事者参加が不可欠であると意見があり、障がい当事者数名から今後の調査に参加する意向が表明されました。
 今回のセミナーでは、次世代のサイン環境を考える上での課題が整理されました。また、このセミナーを機会に、サイン環境特別研究委員会の活動がますます発展することが期待される内容となりました。
(文責:金井謙介、石塚裕子)
ご講演の様子
〈ご講演の様子〉
パネルディスカッションの様子
〈パネルディスカッションの様子〉

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